「あ。すいません。デリカシーのない質問で……。確か昨日も言ったんすけど、桐生さんはどこか気になる人なので、つい……」


 本田洋佑はへへっ、と笑った。……が、やっぱり笑えないな。もともと言うつもりなどなかったが、俺は言ってやった。俺が生きる理由を。


「俺が生きているのは、大切な人を守るためだ」


 ──篠原さんを守るためだ、とは本田洋佑の前では決して言わないが、その気持ちをありったけ篭めて言った。

 本田洋佑はポカンと口を開け、目を見開き、驚いたような顔をする。


「そうなんっすか~……。なんていうか……うん、すごいっす……!その大切な人って、やっぱり片想いの彼女さんっすか?」

「ああ」

「でもその片想いの彼女さん、桐生さんのことを見ていないんっすよね? なんていうか……俺なら堪えられないっていうか、桐生さんを尊敬するっす!」

「……どうも」


 尊敬なんてしなくていい。というより、してほしくない。少なくとも、コイツには。……そんなことを言えるはずもなく、俺は小さくそう言った。


「ところで、桐生さん。桐生さんの片想いの彼女さんってどんな人っすか? 桐生さんがどんな人に惹かれるのか……俺、興味があるっす」


 ……何?