佐藤は春香とのことがあってから喋っていないし、他に友達はいない。欲しいとも思わない。いたところで邪魔なだけだ。

 家族は、俺が春香のことで自分の部屋の中でふさぎ込んでいた時、見知らぬ車が俺以外の家族を乗せた車に衝突してきたため、全員死んだ。

 衝突してきた車の運転手は酒を飲んでいたそうだ。つまり飲酒運転。寂しいとは思わない。……心が壊れてしまったからか?

 なんにせよ、今は篠原さんが傍にいるので、どっちみち携帯などいらない。


「そうなんっすか……。あー、でもほら、ネットで色んなことが出来るし、連絡を取り合う以外にも携帯には使い道が──」

「──必要ない」

「……。失礼っすけど、桐生さんって何か趣味とかあるんっすか?」


 話が変わったな。趣味、か。考えてみたが、何も思い浮かばない。


「ないな」

「じゃあ、いつも何を楽しみに生きているんっすか?」

「……特にないな」


「──……じゃあ、桐生さんは、なんのために生きているんっすか?」


 何故、コイツはそんなことを聞く?聞いてどうする?何故、こんな奴に教えなければならない?