「俺に出来ることなら、なんでもするから」

「あ、ありがとうございます。でも、何もない、です。……あの、大きな声を出して、ごめんなさい」

「……? 部屋は防音なのだから、篠原さんが謝る必要は全くない」

「そういうことじゃなくて……。桐生さんは、うるさかったでしょ?」

「いや、全然。篠原さんの感情的な声が聴けて、嬉しい」

「……っ!」


 わ、私、何っ、顔を熱くさせているのっ?!まるで、桐生さんがそう言ってくれて嬉しい!……みたいな反応じゃないっ?!

 いや、正直そう言われて嫌じゃなかったけれど!嫌じゃなかったけれど……!って、ああ、もう!本当に私は最低な人間だっ!


「……今から、晩御飯を作るよ。何かリクエストはないか?」

「え、あ……。それじゃあ、オムライス、とか。それと……」

「──ココア、だな」

「!」


 ズバリ、ほしいものを言い当てられて、驚きのあまりに私の身体が動かなくなる。けれど、合っているので、慌ててうなずいた。

 桐生さんは微笑み、すくっと立ち上がると、そのまま台所へ直行──はせず、私の頭を軽くポンポンと撫でてから、台所へと向かった。

 ……何、今の。反則でしょ。顔が熱いのは、たぶん気のせいだ。