「いっそうのこと、乱暴に扱ってほしかった!そうしたら……桐生さんのこと、心の底から嫌いになれるのに!恨めるのにっ!」


 あなたがそんなにも優しいから、私は……。


「……優しすぎるあなたを、心の底から嫌いになんて……なれるわけがないじゃないですかっ!」

「……すまない」

「謝らないでください!そうやって謝るから……私……私は……っ!」


 ……な、に?私は今、桐生さんに何を言おうとした……?


「篠原さん……?」

「な、なんでもない……です!」


 心臓がバクバクと急激に暴れ出す。

 私、私は……今、何を言おうと……。

 頭を軽く左右に振り、再び桐生さんから目を逸らす。

 ……私は今、とんでもないことを口走りそうになった。絶対に口にしてはいけないことを、口にしそうになった。

 ……私は、最低だ。

 洋佑のことはもちろん好きだけれど、同時に、桐生さんのことも好きになっているだなんて……!

 ……ああ。
 ……ついに認めてしまった。

 認めたくないと思っていたのに、認めたらダメだと分かっていたのに……とうとう認めてしまった。

 私は好きなんだ。好きになってしまったんだ。私を誘拐し、監禁している人間を。犯罪者を。


 ──桐生一夜という人間を。