そして、そのまま自分の家に帰って、楽しかった日常に戻りたい。
──けれど、それは同時に、桐生さんが捕まっちゃって、私の前からいなくなるということを意味する。
私を誘拐して監禁した犯罪者なのだから、捕まって当然だと思う。思うのだけれど、それを心の底から素直に喜べないのは、桐生さんが本当は優しいことを知ってしまったからだ。
──だから私は、桐生さんが洋佑と会ったと聞いて、動揺している。
「すまない。篠原さんを悲しませたいわけじゃなかったんだ。……本田洋佑の名前を、口にするべきではなかった」
悲しそうな表情を浮かべる桐生さんに、私はぶんぶんと首を横に振る。……何かを喋ってしまったら、涙が止まらなくなりそうだったから。
「……本田洋佑は、君を必死に捜していた」
「洋佑……っ!」
洋佑の名前を口にするのと同時に、涙が次々と溢れ出てくる。
「……心配、していた」
──桐生さんは、優しい。
どうしてそこで嘘をつかないんだろう。そこで、「洋佑は君を嫌っていた」って嘘をつけば、私が帰りたがることはなくなるかもしれないのに。
それは、彼が嘘がつけない性格だからなのか、それとも……。
──けれど、それは同時に、桐生さんが捕まっちゃって、私の前からいなくなるということを意味する。
私を誘拐して監禁した犯罪者なのだから、捕まって当然だと思う。思うのだけれど、それを心の底から素直に喜べないのは、桐生さんが本当は優しいことを知ってしまったからだ。
──だから私は、桐生さんが洋佑と会ったと聞いて、動揺している。
「すまない。篠原さんを悲しませたいわけじゃなかったんだ。……本田洋佑の名前を、口にするべきではなかった」
悲しそうな表情を浮かべる桐生さんに、私はぶんぶんと首を横に振る。……何かを喋ってしまったら、涙が止まらなくなりそうだったから。
「……本田洋佑は、君を必死に捜していた」
「洋佑……っ!」
洋佑の名前を口にするのと同時に、涙が次々と溢れ出てくる。
「……心配、していた」
──桐生さんは、優しい。
どうしてそこで嘘をつかないんだろう。そこで、「洋佑は君を嫌っていた」って嘘をつけば、私が帰りたがることはなくなるかもしれないのに。
それは、彼が嘘がつけない性格だからなのか、それとも……。