「俺はさっき名乗った。そして、ここは俺の家。……ほら。もう知らなくはない」

「だーかーら!あなたが何をしている人だとか、どんな性格の人だとかが全然分からないって言ってるんですっ!」

「知りたいのなら教えてやる。俺はすぐそこの喫茶店でバイトをしていて、性格は……自分では分からないな。答えてやれなくて、すまない」

「……」


 私は言葉を失った。本当にこの人はなんなのだろう?私が想像していたストーカーとは全然違う。

 私が知りたいと言ったからにしても、こんなにもぺらぺらと、素直に自分のことを話すものなんだろうか?

 愛する者を独占できたなら、あとはその人を自分の好きなように扱うのではないのだろうか?少なくとも、私のイメージではそうなのに。

 桐生さんは他のストーカーと違うのだろうか?いや、でも、他のストーカーと違うにしても、私をこうやって監禁したことに変わりはない。

 ……頭が、痛くなってきた。


「大丈夫か? 顔色が、悪いぞ」

「……あなたのせいですよ」

「ココアを飲んだら落ち着く」


 ……分からない。桐生さんという人が分からない。

 周りの人に比べて、“遥かに変わっている人”ということだけしか分からない。


「……ココアは、結構です。いりません」


 もう冷めてしまっているだろうし、やっぱり危険な薬なんかが入っているんじゃないかと考えたら、飲む気になんてなれない。