私の中の恐怖は、恐怖を通り越して呆れに変わったため、思わず小さな溜め息を吐いた。

 ダメだ。これが素にしても冗談にしても、何を言っても通じないらしい。


「もう、いいです」


 何を言ってもダメだと分かった以上、私はここから出してはもらえないことが確定した。“篭の鳥”というやつだ。


「……桐生さんは、私を殺すつもりじゃないのなら、一体どうしたいんですか?」

「……外は危険だ。篠原さんを危険な外へは出せない」

「はい?」


 何を言っているんだ、この人は。外が危険だから、尚且つ私を愛しているから監禁した?私からすれば今の状況の方が危険なのだけれど……。


「私からすれば、今のこの状況の方が危険だと思いますけど」


 ポロリ、本音が零れ出た。


「……何故?」

「私はあなたを知らない。ついさっき知ったばかり。知らない人に知らない場所に鎖で繋がれて、おまけに家に帰してもらえない。これからどうなるのか分からないのに、恐怖以外の何を感じろというのですか?」


 怒りに身を任せて、早口で喋ってしまった。

 自分の言い方に、桐生さんの怒りを買ってしまったかもしれないと内心は焦ったけれど、やっぱり桐生さんは無表情のままだった。