「でもっ、お母さんとお父さんが警察に通報をして、私の行方を捜しているはず……。時期にあなたを捕まえに来ますよっ?!」

「……何故?」

「何故……って、あなたがしていることは誘拐に監禁!立派な犯罪なんですっ!だから……」

「──“だから、警察が俺を捕まえに来る”?」

「……はい」


 桐生さんは“警察”や“誘拐”、“監禁”や“犯罪”などの単語を耳にしたのにも関わらず、相変わらずの無表情のまま。

 その無表情を見た私の頭の中には、一瞬だけ、人形の姿が思い浮かんだ。


「……分からないな。何故、警察は俺を捕まえに来る? 俺はただ、君を愛しているだけだ。人を愛することは、いけないことなのか?」


 私は桐生さんの言葉を聞き、ぽかんと口を開ける。……けれど、すぐに首を振って我を取り戻した私は、再び桐生さんに言う。


「愛することはいけないことではありません。ただ、あなたは私が嫌がっているのにも関わらず、こうやって行動を縛っています。これを世の中では“監禁”といって、立派な犯罪なんです!」


 もちろん誘拐も犯罪です、と付け加えた。しかし、桐生さんは頭にピンッときていないのか、やっぱり無表情のままだ。


「行動を縛っている? ……どこが? 君はベッドの上から降りて歩けるだろ? それのどこが行動を縛っているというんだ?」


 ……この人は、素でそう言っているのだろうか?

 ふざけるような状況ではないし、まだ知り合ってそんなに時間は経っていないけれど、桐生さんはふざけるような人ではないように見える。

 それじゃあ、やっぱり今のは素?