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 口に含んだココアの優しい甘みが、私の中の苦しみをすべて打ち消してくれているようだった。

 ココアを飲むと美味しいのはもちろん、落ち着くし……少しだけ幸せな気持ちになれる。

 ──桐生さんに抱きしめられた時から時間は過ぎ、夜になった。手足の鉄枷はついているし、いつもと変わらない夜の時間。お互い、特に何かをするわけではなく、自分の時間を過ごしていた。


「あっ、そういえば……」


 ふと、ゲームセンターの白いうさぎのストラップが頭を過ぎる。


「結局、白いうさぎのストラップ、手に入れられませんでしたね……」


 かわいいと思っていた手前、今、自分の手元にないのは残念だなぁ。まぁ、あの男性たちが私に話し掛けてきたせいだと言えば簡単なことなのだが。


「……あ、」

「?」


 ごそごそと、桐生さんは自分のズボンのポケットから何かを取り出し、そっと机の上に置いた。

 そこには、本来ならここにはないはずの白いうさぎのストラップがあった……って、ええっ?!どうしてここにコレがっ?!