「篠原さん、愛している」

「でも、私には洋佑がっ」

「そんなこと、どうだっていい。俺は篠原さんを愛しているんだ」


 私の顔に、グッと近付いてきた桐生さんの整っている顔。近い!とっても近いってば……っ!


「篠原さん……」


 あわわわ……!口!このままじゃ唇と唇が、触れ合ってしまう――。


「──だめえええっ!!!」


 がばっと、勢いよく飛び起きる。ぜーはーと息をする私の身体は、異常なほどに汗をかいていた。

 慌てて辺りを見渡すと、もう完全に見慣れてしまっている白い部屋が視界の中に飛び込んでくる。

 ベランダ、白い部屋、廊下、そして最後に台所……と、順番に目を向けていくと、台所に立っている桐生さんが、驚いたようにこちらを凝視していた。

 何やら手には湯気の出ているマグカップを持っているけれど、今はそれを気にしている場合ではない。

 ……なに?……今の?


「はぁ……はぁ……」

「……篠原さん?」

「はぁ……あ、えっ?」


 もしかして、ゆ、め……?私、夢を見ていたのっ?!ど、どんな夢を見ているんですか!私はっ!

 夢の内容を思い出しただけでも顔が熱くなる。それこそ、顔から湯気が出るんじゃないかと思うくらいに。