自分の言うべきことは言ったと、桐生さんは再び鉄枷をつける手を動かし始める。

 鉄枷より、時折触れる桐生さんの指の方が冷たいのは……気のせいなんかではないだろう。氷よりも冷たいような気さえする。


「それじゃあ、桐生さんは……」

「ん?」

「私のことを愛していると言っていたけれど、それは……嘘じゃないんですね」

「ああ。当たり前だ」


 即答、尚且つ断言された。

 同時に、手足に鉄枷をつけるのが終わったらしく、桐生さんは机を挟んだいつもの位置に腰をおろした。

 スッ……と細められた右目が、私のことを見つめる。無表情ではなく、真剣な表情……に見える。


「本当に篠原さんのことを愛していて、すべてのモノから守ると決めたから、俺はこうして……篠原さんを手を伸ばせば届く距離に置いたんだ」


 またしてもハッキリとそう言われてしまい、私は口をつぐむ。桐生さんにそう言われて、私はなんて言葉を返したらいいのか……分からなくなるのだ。

 お礼を言うのは変だし、迷惑ですと言うのは……桐生さんのその気持ちが真剣で、一途なものだと分かってしまったから、言ってしまったら……桐生さんの気持ちを全否定して、傷付けてしまうような気がして……。

 私は何も、言えなくなる。