「はあっ、はあっ…ちょっ、ちょっと待て利紀、分かった、分かったから…」


トップでグラウンドに帰って来た俺が呼吸を整えようとする間に、後ろから息一つ乱していない利紀がヘッドロックをかけてきた。
息を軽く整え、事の説明を試みる。


「あ、あんな、昨日帰るときに言われたんだけど…」



「本当なんだな?!本っ当に別れたんだな?!」


ヘッドロックからネックハンギングに移行しながら俺の体ごと前後に揺さぶる利紀。
いやもうどうすりゃいいのさ。



「けほっ、けほっ、きついって…
今嘘ですなんてのたまったら本当に締め落とされるわ!何だったら本人に確認すりゃいいだろ!」


俺はやっとのことで首を掴んでいるごつごつした手を外す。


そしてしばし微妙な間合いで睨み合う。












「…本「本当だ!」














「…嘘「ついてたら針千本でも釘千本でも飲んだるわ!」


俺が最後の駄目押しをすると、みるみる利紀の顔がほころんだ。



「いぃやっはうおぁぅぁぁぁーー!!」


「やかましいわ!さっさとパス練習やれ!!」


体育教師兼野球部顧問の俵田(たわらだ)がぶん投げたサッカーボールが浮かれまくっている利紀の後頭部にぶち当たる。


額に青筋を浮かべて2球目をカゴから取り出す俵田を見て、俺はとばっちりを受けないよう避難した。