他愛のない会話をして手にしたワインを森内に渡すと、素直に受け取り口に運んだ。

ショーが進むにつれて森内の表情が硬くなっていく。
杯を勧めても飲み干すことはなかった。

仮面をつけた赤いドレス姿の女性たちが剣を持って踊り出すと急に顔色が悪くなった。


「どうした、森内」

「いえ、なんでも」


探るように眺めた森内の緊張した顔。

仮面を着けた彼女らが持つキラリと光る長い剣。
本物の剣で薙ぎ払われたら首が宙に跳ねるのも確実だ。


「…あの衣装」


桐花と桃花が着ていた衣装だ。

チャイナドレスだが剣を持って踊りやすいように裾が工夫されてるんだろう。

赤いドレスを着た十名それぞれが仮面をつけてる。

桐花や桃花、他の刺客が紛れていてもわからない。

りおの隣にいた仁が一歩足を前に出しりおを舞台からさりげなく庇う。