しばらくしてショーが始まった。
りおの隣には仁。
少し離れたところ親父と留恵さん。
榊と拓也が護衛し隣には懐刀の桐生が控えている。
俺にはさりげなく一也と前広がついて。
賑やかにクリスマスショーが始まると中央の丸テーブルに向かって静かに歩いた。
ワインを運んできたボーイを呼び止めグラスをふたつ手に取りながらゆっくりと歩く。
中央のテーブルに近づくと男は、俺を「若」と呼び、上座へと通した。
初老で、白髪まじりの頭はオールバック。
でっぷりした体は彼女らが言った『狸』そのものだ。
『モリウチの狸』
森内の隣で普段と変わらずに言葉を交わす。
何事かを企んでいるはずなのに微塵も感じさせない。
「若、ご結婚おめでとうございます」
「ああ、森内。たくさんの祝いを頂いた。ありがとう」
「いえ、……美しいお嬢様ですね」
「ああ」