半泣きするりおの顎を掬い目を上げさせて、光が浮かんだ瞳にくちびるを落とす。
「俺は信じてる」
「……奏さん」
「おまえが信じたヤツを俺も信じる」
「うん」
りおがひとすじの涙を流して頷いた。
「若、りおさん、時間です」
ポケットの中の懐中時計を取り出して榊が時間を告げた。
「りお、大丈夫だ。さあ、行くぞ!」
口の端を上げて手を伸べるとりおが涙を拭きしっかりと握り返した。
りおの瞳にはもう迷いはなかった。
―――信じる
俺はりおや榊、仁とともに歩んでいけばいい。
りおが信じた道を。
榊が背中を押した道を。
仁が許したその道を、みんなで歩んで行けばいい。
―――そう思った。