「……なんでもない」


スイッと目を反らして強引にりおを引き寄せた。


「奏さん?」


妙な空気と僅かな沈黙。

りおがその空気を察して慌てて俺から顔をあげた。


「わ、わたし部屋に戻ってるね」


顔を真っ赤にして頬を押さえながら胸の中からスルリと抜け出した。

草履を突っ掛けて、控え室へと戻っていく。






「桐花さん?桃花さん!?」


突然、りおの声が響いた。


「……どうした!?」


りおの声を聞いて飛び込んだ先の部屋には、いるはずのふたりの姿がなかった。





―――逃げたのか



どうしていない?
どこに行った?

いったいどこへ―――