『モリウチ』
『え?』
『モリウチの狸』
『タヌキ?』
桐花の唇から零れた人物の名前に聞き覚えがあると、りおも悟ったようだった。
『森内?奏さんのお父さんと一緒にいる…』
『ソウ、モリウチ』
『森内』
りおがふたりの手を握りしめた。
『―――許せない』
と、呟く。
「くそ、あいつが」
「親父と俺が死ねば、大神組は森内か、西の狩野のものだからな」
ぎり、歯噛みする仁に、俺の頭の中は冷めていく。
「どうする、奏」
「………」
「森内を押さえるか」
「………」
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