「具合の方はいいのかね?」
ずっと背中を向けていた声とは違った。
低いが拒絶する声とは違う。
「…だ、大丈夫です。ご、ご心配おかけしました」
「そうか。ならいいが」
素っ気ない口調ではあったが、りおを見つめる視線は柔らかかった。
「奏、」
親父が俺を呼んだ。
「大事にしてやれ」
耳を疑い、親父を凝視した。
「今が一番な時期なんだろう?成田から聞いた」
そしてまたりおを見、
「腹の中に子がいるのに無茶するのは感心しないな」
苦虫を噛み潰したような顔をして眉を寄せた。
「咄嗟にああいう行動が取れるというのは素晴らしいことだが、まずは自分の身を大事にすべきだ。
まあ…奏が溺愛してるのがわかる気がしたがな」
「親父、」
「カタギのお嬢ちゃんだなんて、バカにしてたが。いや、なかなか肝の座った娘だと正直驚いた」