「俺の車を正面につけろ。出かける」
『護衛にわたしも』
「いや、今日はどうしても確かめたいことがある。ひとりで行かせてくれ」
『りおさんの件ですか?』
「ああ、りおが動き出した」
『……そうですか』
一瞬の翳りのある声にせつなさを感じたが、それもすぐに消えた。
「りおを連れて戻ってきたら榊と仁に話がある。空けておいてくれねぇか?」
『わかりました。仁に話しておきます』
「ああ、頼む。それから親父に連絡入れておいてくれ。今夜開けてくれと。」
『わかりました。組長の予定を開けていだだきます』
電話を切り、部屋の机の中にしまっていた白く小さな箱を取り出した。
上着のポケットにしまい目を閉じて深呼吸する。
りおと出会ってから揺らぎのない想いが胸の中にあると確かめる。