『ゴールデンウィークにはそれはそれは見事な桜が咲くんですよ』


丸井が亡くなる前にそう話したのを思い出した。


「この件が済んだら俺が田舎まで送り届けるって言ったんだ。
それが俺と丸井の最期の会話だった」



―――あれから



あれから一週間が経ち。



丸井が荼毘にふされ、丸井の所持していた手帳と財布を目の前のテーブルに置いた。



「……そうだったね。丸眼鏡さん、この手帳に挟んである娘さんの写真大事にしてたみたいだったよね」


所々折れ曲がった一枚の写真。仏頂面の俺と満面の笑みを浮かべるあどけない少女、丸井の娘が写っている。

丸井が亡くなった夜。りおと最期の別れをした部屋でふたりで丸井の手帳を開いた。

あの時の手帳だ。



「三七日に丸井を故郷に連れて行こうかと考えてる」

「うん。丸眼鏡さんも喜ぶと思う。娘さんと一緒にいるのが幸せだよ、きっと」