―――夜明け前。
ビル内を制圧して、俺が正面に姿を見せた時。
「奏さん!!」
仁の静止を振り切り泣きながらしがみついた。
「奏さん!!」
「りお」
「生きてる。生きてる。
無事だった…」
「……ああ、俺は無事だ」
涙を拭いてりおの前髪を掻き分けて額にくちづける。
ふたりがこうして生きてる。それだけでいい。
二度と離れたくない。
「仁、急ぎここを離れるぞ!!」
仲間に叫び、
抱きついて身を寄せるりおをひょいと抱えて口の端だけをあげた。
「俺は生きてるだろ」
「若!!りおさん、警察がきます!!」
榊の言葉に、
「警察!?」
ビクッ
りおが腕の中で小さく震えた。
「大丈夫だ。兄貴ふたりにはちゃんと話しは通してある」
今までにも発砲事件は新聞には載らなかった。
今回も大事にはならない。
「よし!!引き上げるぞ!!」
仁の張り上げた一言で一斉に車は走り出した。