「行くぞ!!」


さらに階段をあがり見覚えのある階に到着し、角を曲がるとふたりの頑強な男がふたり額を撃ち抜かれて転がっていた。

撃った腕は確かだ。
一発で仕留めている。

男のいた扉の奥には数時間前に俺も通されていた。

半開きになっている重厚な扉を開く。


「若、」

「ああ、中で倒れてるのがアイツだ」

「………」


顔を見る気もない。
二度と見たくない。

絨毯に広がる染みはもうどす黒く変色していた。


「用はねえ」


血生臭い部屋をそのまま後にして、奥の扉まで歩く。


微かに香る花の匂いがした。



「りお?」


確かに花の香りがして振り向いた。


「若、どうしました?」

「いや、……何でもない」


榊から聞いた話が頭の中で再現された。

アイツの頬を叩いて、「あなたなんかの女には絶対にならない!」と、俺を自分の力で取り戻すと宣言したと。