夜明け前の道を走り、龍神会のビルの前に停車した。
「りおはここまでだ」
二時間前に撃たれた丸井を抱えて後にした場所。
正面ガラスが銃弾で砕け散り壁には赤黒い汚れが散っている。
この中で繰り広げられる惨劇をりおに見せるわけにはいかない。
「榊」
榊を呼び、りおを車に留める。
「榊、りおを頼むぞ」
「奏さん」
「必ず決着はつけてくる」
「奏、さん」
不安顔で俺を見る。けれど本当は芯が強いことも知っている。
龍神会に単身で踏み込んだ俺を救いだそうと榊、仁らと数名で乗り込んできたくらいだ。
弱音を吐かずいつも俺を見ていてくれる。
「わたしここで奏さんを待ってるから」
「ああ」
「ケガしないでね」
「ああ、わかった。行ってくる!」
「りお、若には俺がついてるから大丈夫だ。何も心配すんな」