宵の口。
ふたりだけホタルの光に包まれている。
淡い光の中でりおが宙を仰いでいる。
「きれいだ」
りお。おまえはとても綺麗だ。
「その浴衣似合う」
りおが一瞬照れくさそうな顔をして頬を両手で隠した。
「りお、」
「え?」
名前を呼んだ瞬間にこの腕の中に閉じ込め抱き締める。
「…、奏さん…」
「悪りぃな、」
もう少しだけこのままで―――
りおの手が優しく背中を擦ってくれた。
「奏さん」
「………」
護りたい。
おまえが大切なんだ。
見失ってからこの手に取り戻すまで生きた心地がしなかった。
失えない。
失いたくない。
―――絶対に
俺にできるのはこのぐらいしかない。
「奏さん…」
「………」
「ありがとう…」
「………」
背伸びしてりおが背中に腕を回して抱き締め返す。