『……助かりました』
「え!?いや、そんな!!いいんですよ!!」
目の前には子連れの熊がいたのだった。
子連れの熊は警戒心が強く、凶暴であるのは一応知っていた。
が、その時の対処法など知っている訳もなく。
『………』
熊をじっと見つめ、熊が何処かへ行くのを待っていた時。
一人の黒髪の少女が此方に駆け寄ってきて、熊に
「大丈夫よ。貴方達は山へお帰りなさい?」
と告げると、理解したのか何なのか、熊はくるりと引き返していったのだ。
――――――――――――――――
『本当に有難う御座います』
再度礼を言い、頭を下げると、少女は慌てて手と首を左右に振った。
そして、晴れやかに笑って私に告げた。
「困っている人がいたら、助けるのは当たり前の事です」と。
当たり前……か…