「誰が信じてもらいたいなんて言った!」
 俺は楓谷の手を引き相談室を出た。
 楓谷は本当に驚いていた。
 でも俺達は止まることなく走った。
 玄関の前で俺は足を止めた。
 俺も楓谷も息を切らしていた。
「・・・神守君・・・はぁはぁ・・・」
 楓谷は何かを言いたそうだが、息を切らしているため、上手く話せていない。
「ごめんな・・・。急に・・・走っちゃって・・・」
 俺も息を切らしているため、言葉が途切れ途切れになってしまう。
 それを2人で笑った。
「びっくりした。神守君が急に相談室に入ってきて先生と張り合っちゃうんだもん!」
「あぁ。なんか・・・ムカってきてさ!」
「ありがとね。・・・嬉しかった。」
 楓谷の『ありがとう』は何回目だろう。
 俺はそんなに感謝されるようなことをしたのか?
「何がだよ。楓谷にとっては迷惑だっただろ」
「そんなことないよ!本当に助かったの!」
 楓谷は首を横に振った。
 それで俺は思い出した。
 言わなくてはいけないこと。
 伝えたいことを。
 蓬田が俺の背中を押してくれたんだ。
 言わなきゃいけない。
「楓谷・・・」
「何?」