「・・・崖から落ちた。」
「はあ?」
 ひどい嘘だ。
 嘘にもほどがあるだろと自分を自分で引いた。
「ほっといてよ」
 そう言ったら母さんは何か言いたげな顔をしたが何も言わず救急道具を出してきて処置をしてくれた。
「・・・眼科行くかい?」
 俺の目は腫れて目が開けられない状態だった。
 俺は頷いて母さんと眼科へ行った。
 眼球に異常はなく、数日で治ってくると言われ、俺は眼帯を付けることになった。
 きっと周りから俺は喧嘩小僧かいじめられっ子と思われただろう。
 帰ってくると父さんが居た。
「・・・お前、喧嘩でもしたのか」
 どうやら朝陽から俺のことを聞いたらしい。
「違うよ」
 俺は部屋にこもった。
 誰にも言いたくなかった。