「翼、今日はあんまり食べないね。」
「なんか・・・。腹痛いから部屋戻るわ」
 本当は腹が痛いわけじゃないけど。
 部屋に戻り、ベッドに転がり込んだ。
 すると、部屋をノックする音が聞こえた。
「お兄ちゃん・・・?」
 朝陽が俺を心配して来たみたいだ。
 余計なお世話だっつーの。
「何?」
 朝陽はお人よしだ。
 世話焼きで・・・無駄に思いやりがある・・・。
「気分悪いなら、散歩でもしてきたら?」
「おー・・・。」
 枕に顔を伏せながら答えた。
 今、朝陽がどんな顔をしたか分からないけど、きっと心配したような顔をした。
 俺は立ち上がり、部屋を出た。
「さ、散歩に行くの?外は寒いから、何か着てかなきゃ!」
「おー・・・。」
 朝陽は俺の部屋からパーカーを取ってきた。
「気をつけてね」
「おー。」
 俺はそれだけ言って家を出た。
 外は寒かった。
 パーカーのポケットに手を突っ込み歩いていた。
 この時も俺は、楓谷のことを考えていた。