「・・・。」
「・・・。」
 あぁ、馬鹿だな。
 楓谷と俺の家はま逆だってのに・・・。
 遠回りして帰ることになった。
 でも嫌ではなかった。
 それに、楓谷が良いと言ってくれたのに驚いた。
 なんで俺はこんなに楓谷に尽くそうと思えるのだろう。
 それは、きっと、楓谷に同情しているからだろう。
 嫌な奴・・・だな、俺は。
「あの・・・。」
 珍しく楓谷から話しかけてきた。
「何?」
 平常心を保って返す。
「なんで・・・一緒に帰ろうなんて・・・。」
 聞くと思った。
「・・・ダメかよ。」
 本当に俺は馬鹿だな。
 こんな言い方じゃ誤解される。
 変な期待を抱かれるのもありえる。
「私なんかと一緒に帰ってるの見られたら・・・大変だよ?」
 やっぱり、楓谷は気にしてるんだ。
 学校を出た時から、楓谷は俺との距離をなるべくとって歩いていた。
「なんでだよ」
 笑い交じりに言う俺を楓谷は不思議そうに見ているのを感じた。