稲川さんは、決して悪いタイプの人間では無いと思う…しかし、彼女の時間のルーズさには、いい加減付き合いきれなくなって来ていた。
突然の電話が昨日…今日の午後1時の約束が、3時になっても姿を現さない。…信用しがたい契約が、更に信用しがたいものとなっていく。
彼女を悪い人とは思わないが、この時間のルーズさには、幾分か腹がたつ。
苛々がピークを迎えそうな時、稲川さんと社長さん、契約相手がやって来た。
г遅くなってごめんね…こちら、家を買ってくれる笹島さんです」
『初めまして…どうぞこちらにお掛けください』互いに挨拶を済ませ名刺交換をする。