「お前は小夜か、小さな夜か、素敵な名前だな。深青に沈む月は輝くから」
「な、何で名前」とは口にしないが、彼女の顔面を見れば誰だって理解するものだ。
「名前は知り、呼ばれる為にある。鳥に聴いてごらんよ、雑草は知らないだろうけど」
は、はあ。小夜は困って頷く。不思議な雰囲気を持っている、とは第六感が告げていたが、それにしても、だ。此処までとは誰が想像出来ようか。どの様な教育を受ければこうも突飛した言動が出来るのか。
しかし、これで分かったことがある。彼女は、噂されている程、悪意のある子では無いのだ、という事だ。タイマントーナメントの真相は分からないが、見たからには試合前放棄だったが、きっと何か理由があったのだ。
「なあ、お前、お前は嫌か」
「?」
「間違えられるの、嫌か」