老人の話は続いた。先ほどとほとんど同じ内容のループだった。

「いいか? 精神医学なんてのは製薬会社に買収されている状態なんだよ。医者はもっともらしいことを説明してクスリを出すことしかできない。薬屋の犬でしかない」

「そ、それは、どの病気も同じなんじゃ……?」

「う、うるさい! オマエに何がわかる!」

「は、はぁ……」

「知ってるか? 路上で手に入る麻薬の何倍も死んでるんだぞ?」

「そ……それは、流通量が違うからじゃないんですか?」

「そうだよ、それだけ大きな組織になってるんだよ。黙らせて、大人しくさせて、搾り取るだけ絞って、最後には殺しちまうんだよ」

【うっとおしい老人だねぇ……いつまでつきあってんの?】脳内で男の声が響く。うるさい。
老人は陰謀論を話し続けている。脳内では男の声が響く。

【薬を飲まないというのは、わるくないね。 手術も反対だな】あなた誰ですかと問いかけてみた。話しかけるのは、疑問を投げかけるのは初めてのような気がする。だけど返事は何もない。無視か。

「無視か」と、なんとは無しにボソリとクチから言葉に出てしまう。すると老人は真顔になり「平純一だよ」と言った。

「平純一?」

「誰だそれ?」と、老人は目をまるくして言った。

「へ、いや、その……なんでもないです。あの……その……

変な話なのですが……」平純一たしかに老人はそう言った。そら耳のようなものだろうか。