「じゃあ、またね」

「うん、またな」

あたしは絶対に『ばいばい』とは言わない。
また会うんだから『またね』じゃなきゃおかしいと思う。
『ばいばい』なんて悲しいこと、言いたくない。

「ただいま~」

家のドアを開けると、ふわっと甘い香りがした。

「あ、葵!今クッキー焼いたのよ!食べてみて!」

お母さんは、少し大きめのラッピング袋にクッキーをたくさん入れ、あたしに手渡した。

「ちょっとお母さん、バイトあるのよ。里紗子ちゃんが紹介してくれて!」