Jewel……

 あいつらは族の中でもトップクラスの族だった。

 だけど、それは汚い手を使って手にいれていた地位だった。

 戦いの時には武器を使い、挙げ句の果てには
人質までとって族を解散させていた。

 許せないと思った……

 しかも風の噂で聞いただけだが、族に私をいれようとしていたようだ。

 まぁ、入る気は更々なかったんだけどね。

 だからあのとき倉庫に向かって潰してやることにしたんだ。

 そして、倉庫に着いて扉を開けたとき目にしたのがあの二人組だった。

 女の子の方は男一人に捕まっていて、男の子はその目の前で3人くらいの男達にボコボコにされていた。

 男の子は反撃をしていなかったので、反撃をすると女の子に危害を加えるなどと言われていたのだろう。

 私は駆け出し、男の子を殴っていた一人を蹴り飛ばした。

 男が10mくらい飛んでいったところで残りの男達と女の子を押さえていた男が驚いた顔で私を見た。

 とりあえず暴行を加えていた奴らを蹴り飛ばし、女の子を押さえていた男は顔面に一発いれてやった。

 ふと男の子の方を見ると、ぐったりとしていて動かない。

 これはヤバいと思ったとき、騒ぎを聞き付けたのか部屋の奥から40人近くの族のやつらが出てきたので、総長以外一人残らず蹴散らした。

「二度とこんな卑怯な族にするな。お前らみたいなやつがいるから私がいるんだ。私がいなくても治安がよくなるように、上にいきたいなら卑怯な手を使わず上を目指しな。おまえが族を引っ張ってやらなくてどうするんだ。お前ならできるだろ?仲間を引っ張ってやれ」

「…まだやり直せるか……?」

「今すぐにならまだ間に合うだろう。一からやり直せ」

「…………」

 辺りが静かになったところで二人組のほうに向き直ると、女の子が必死に彼の名前を呼んでいた。

「瞬!瞬!目を開けて!瞬!」

 するとピクリと指が動き、そのままゆっくりと目を開けた。

「み…美緒……?」

「瞬!」

 よかった、気がついて。

 これで用は片付いた。

 帰るか。

「…あの!」

 ん?

 出口に向かおうとしたとき、後ろから声をかけられた。

「なに」

「えっと…助けてくださってありがとうございました!」

「別に。当然のことをしたまでだし。それに、ここに来た目的はここを潰すことだったしね」

「あの…お名前は?」

「名乗るほどのものじゃ…「お願いします!お礼がしたいんです!」

 この子、言葉被せやがった。

 まぁいいや。

「教えてどうするんだ?」

「恩返しがしたいんです」

「私がいつまでもこの町にいるとは限らないぞ?」

「それでもいいんです、絶対見つけます。だから教えてください!」

 そう強い眼差しで言うと、勢いよく頭を下げた。

 下げたときに頭が男の子のお腹に直撃して、男の子は悶絶、女の子はアタフタ。

 正直コントにしか見えなかった。

 名前か…

「…んじゃ、雪姫」

「雪姫?え、雪姫って…!」

「じゃあね、もうこんなことに巻き込まれないように。あっ、そうだ。Jewelの総長、この子達にちゃんとお詫びしなよ」

「あっ!待ってください!」

 私は振り返らず、手だけを降って倉庫をあとにした。