───時間とは早いもので、もう放課後です。

 特に用事もないので今から帰るんだけど……

 忘れてはいけない重要なこと。

 竜也をどうしましょ。

 竜也は今帰る準備をしてるんだけど、なんだかよそよそしい。

 ん?

 私は帰る準備は終わったかって?

 とっくの昔に終わってますよ。

 チャイムが鳴って30秒で終了したもん。

 んで、そんなことはどうでもよくて、どうしよう。

 一緒に帰るべきなのか、別々に帰るべきなのか。

 あっ、さっき竜也からメールがあって一緒に住むことになったんです。

 絶対手出さないって書いてあったけど、なんか変な感じ。

 私のこと何とも思ってないのかなぁ?って思ったよ……。

 けど、それは私の心の中に秘めておく。

 おっと、話が逸れてきた。

 一緒に帰るべきですか?!

 それとも先に帰るべきですか?!

 あああああああああ

 わかんないよぉぉお!

「結~奈~ちゃん♥」

 私が頭を抱えてう~ん…う~んと言っていると、頭上からユリの声が。

「何?」

 私は今話をしている暇はないんだけど。

「いやぁ~、竜也君と一緒に帰んないのかと思って。」

「……やっぱ一緒に帰った方がいいの?」

「そりゃそうでしょ。何?そんなこと考えてたの?」

 そうですけど?

 悪いのか?

 ていうか、それ以外考えることないし。

「一緒に帰んなさい。」

「えぇぇ、でもなぁ~……みんながこっち見てるし……。若干聞こえる声って『結奈様と竜也君て一緒に帰るのかしら?』って言ってるし。」

「結奈すごっ、なんで聞こえんのよ……。」

 えへへ、地獄耳なもんで。

「まぁ、そんなことはいいわ。早く一緒に帰ろうって言ってきなさい。」

 ユリがビシッと私に指を指しながら言った。

「私から誘うの?!無理無理!無理だから!」

「何言ってんのよ!チャンスじゃない!距離を縮めんのよ!」

 いやいや、別にこれ以上近くなくてもいいよ!

「ダメよ!絶対誘いなさい!結奈が誘わないなら私が言うわよ?!いいの?『結奈が、大好きな竜也君と帰りたいって。だから一緒に帰ってあげて?』って言うわよ?」

「いやぁぁぁぁあ!!!やめて!それだけはやめて!自分で言うからやめて!」

 それだけは言っちゃダメでしょ!

 私が竜也のこと好きってバレるじゃん!

 バレるどころじゃないよ!

 告白だよ、それ!

「よしっ、いけ。」

「うぅ……いってきます……。」

 ユリに鋭い目で見られつつ、竜也のもとへ歩み寄る。

 竜也も私に気づいたようで、こちらに視線を向けた。

「な、なに?」

 竜也噛んでるよ。

 なんてつっこむ余裕もなく、目線を下げつつ竜也の前まで来た。

「…えっとねぇ……あのねぇ……その………。」

 あっ、ダメだ。

 馬鹿みたいな言葉しか出てこない。

 もう無理だと思ってユリの方を向くと、『さっきのセリフ言うわよ?結奈が言わないなら私が言うわよ?』とでも言うような目で私を見ていた。

 大丈夫です。

 自分できちんと言います。

 よしっ!

 こうなったら言ったあとに竜也を引きずって教室から出て行こう!

「竜也!一緒に帰るよ!」

 よしっ、言ったぞ!

 私はすごい早さで竜也の手を突かん
で教室から出て行った。