「──…行ってきまーす。」

 あれから準備をして、朝食を食べて今から学校に行く。

 靴を履いて玄関の扉をとしたとき……

 ──ガチャ……

 私があける寸前で突然扉が開いた。

 不思議に思って頭を上げると、そこには、私がよく知っている人の姿が。

「おはよう。」

「な、なんで竜也がここに……。」

 そう、私が見た人の姿はまぎれもない竜也だった。

 なんでいるの?

 ここ私の家の玄関だよね?

 開けたら外だよね?

「─…あっ、竜也くん。待ってたわ。」

 私が頭の中で訳も分からず混乱していると、後ろのほうからお母さんの声がした。

「おはようございます…あの、話ってなんですか?」

 話?

「えぇ、ちょっとね。」
 
 ちょっとちょっと、なに二人で話してんの?

 私はますます混乱して二人を交互に見ていると…

「結奈、竜也くんは私が呼んだのよ。結奈にも一緒に聞いてもらわないといけないからいらっしゃい。竜也くんも。」

「「はい。」」

 なんのことかはわからないけど、お母さんの後ろを追って部屋に入る。

 私の隣に竜也が座り、私達の目の前にお母さんが座った。

「──それで、話っていうのは?」

 竜也がお母さんに問いかけた。

「うん。話っていうのはね……二人とも驚かないでよ?」

 お母さんが急に真剣な顔になったので、私は何を言われるのかと思いゴクッとのどをならす。

「あのね……一週間二人で一緒に住んでもらいたいの!」

 ………。

「「はい?」」

 今なんて?

 一緒に住んでもらいたいのって言った?

「二人で一週間。わかった?」

 一緒に住むって…そんなの「はいはい、そうですか。」で終われないよ!

「「一緒に住むってなんですか?!」」

 竜也と綺麗にハモってソファーから立ち上がって抗議する。

「まぁまぁ、落ち着いて。」

 落ち着いてって、落ち着ける訳ないじゃん!

 ワナワナしながらお母さんを見ると、さっきとはうって変わってニコニコした表情をしている。

「落ち着けって無理だよ!何一緒に住むって!私にはちゃんと家があるし、竜也にも立派で大きな家があるでしょ!」

「そうですよ!立派で大きなは余計ですが、ちゃんとそれぞれ家があるじゃないですか!」

「だからぁ~、話を聞きなさいよ二人とも。」

 お母さんがまぁまぁと手で座るように指示をしたので渋々ソファーに座る。

「あのね?私達と竜也くんのご両親とで旅行行くことになっちゃって。それで二人ともそれぞれの家に置いててもいいんだけど、結奈は仮にも女の子だから危ないじゃない?いくら防犯対策はしてるとしててもゴキブリが出ただの、蜘蛛が出ただの、うるさいと思うのよ?そしたらご近所にも迷惑だろうし。だったら竜也が結奈が騒ぐの止めてくれたらいいと思って竜也くんのお母さんと考えたのよ♪」

 おい、my motherよ。

 あなた何考えちゃってんの?

 仮にもって、私普通に女ですけど?

 それに私がゴキブリや蜘蛛で騒ぐと思う?

 騒ぐ前に声が出ないよ!

「お母さん、娘の私がいうのもなんだけど…頭大丈夫?」

「まぁ、失礼ね!結奈より正常よ!正常!」

 嘘つけ。

「……まぁ、二人とも落ち着いて。」

 私とお母さんで睨み合いをしていると、ずっと黙って聞いていた竜也が止めに入った。

「つまり、俺が結奈が騒ぐのを止めるために一緒に住めということですよね?」

「う~ん……そんな感じかしらね?ほんとはもっと深い意味があるんだけど。」

 顎を指を当てながら少し考えて返事をしたお母さん。

 いい歳してなにしてんのよ。

 それに深い意味ってなに?

「でもおばさん……俺も一応男ですし、娘と二人にさせるのはまずいんじゃないですかね?」

 そうよ!

 娘と二人にさせるのはまずいよ!

「あぁ、そのことなら大丈夫よ。万が一何かあっても私達は気にしないから♪他の男の子だったらダメだけど、竜也くんなら大丈夫よ。竜也くんのお母さんも言ってたし。」

 あんたらの頭は本当に正常なのか?!

 おかしいでしょ!

 万が一何かあっても大丈夫って!

 別に竜也を信用してないわけじゃないけど、何かあったらダメでしょ!

「いや……でも…………。」

「大丈夫よ。それに、もう決定事項だからね♪」

「はあぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!」

「結奈うるさいわよ。」

「うるさいわよじゃないって!決定事項ってなによ!訳わかんないよ!ていうかいつから?いつから住めっていうのよ!」

「今日。」

「はぁ?!今日?!聞いてないよ!なんでいつもそんな急なのよ!前のパーティーも突然で………「はいは~い、二人とも学校行ってらっしゃい。あっ、住むのはうちだからよろしく♪荷物はあとで運んどくから。一応竜也くんちの鍵渡しておくけど、帰ってくるのはうちだからね?こっそり別々に住むなんてことは出来ないからね?」

「えっ?…まっ……お、おばさん…そんな急に言われても………「ほらほら、さっさとしないと遅刻よ?!行った行った!」

「ちょっとお母さん!話はまだ終わってない……バタン……。」

 し、閉め出された………。

 ていうか嘘でしょ~~~。

 さっきの予感ってこれだったの~?

「…マジですか……………。」

 扉を見つめながら突っ立っていると、竜也が落ちている私の鞄を拾った。。

「…結奈、とりあえず学校行くぞ。」

 二人分の鞄を持って竜也が歩き始める。

 なんでそんな平然としていられるの?

 二人で住めって言われた後なのに……

「早く来いよ。」

「うん……。」

 竜也が立ち止まって振り返っていたので急いで隣に行く。

「諦めようぜ。」

「え?」

 突然何を言いだしたのかと思うと、諦めようぜって。

「どんだけ言っても無駄だ。さっき俺んちでる前に母さんにおまえんち行けって言われて、そん時に絶対変更無理だからって言ってた。なんのことだと思ってたら、こんな事だったのか……。」

 へぇ…………。

 そんなこと言われたんだ。

 絶対変更無理か………。

 私も無理だよ~。

 一週間、ドキドキして死んじゃうよ。

「やっべ!結奈遅刻するぞ!」

「えっ?ちょっと待ってよ!」

 竜也と一緒に住むか………。

 変な感じ。