「──お嬢様、心の声がダダ漏れですよ。失礼なこと言わないでください。」

 おっ!

 心の中で噂をしてたら本人が来ちゃった!

 しかもダダ漏れだったらしい!

 おっこらっれる~~~~♪

 やばいやばい♪

「……なぜ『♪』が入ってるんです……」

「あっ。」

「『あっ。』じゃないですよ……。もしかしてお嬢様は怒られるのが好きなんですか?だからそんなに嬉しそうなんですね。どうりで毎回毎回怒られるようなことを言ってるわけです。」

 ひっ!

 剣斗の後ろに鬼が見える!

 すごい顔でにらんでる!

 それに比べて笑っている剣斗が妙に怖い!

 鬼より怖い!

「け、け、剣斗様落ち着いてください!」

 焦りすぎて剣斗に『様』とかつけちゃってる。

「落ち着いてますよ?いつも通りです。」

 どどどどうしましょ~!

 剣斗様が怒ってらっしゃる!

 その笑顔が恐ろしい!

「さぁて、どのように怒ってほしいですか?」

 キャアァァァァァァァァア!

 手をポキポキ鳴らしながら近づいてくる~!

 殺られる~!

「ごごごごごめんなさい!すいませんでした!もう言いません!」

 後退りしながら逃げていたけど、とうとう逃げ場がなくなったので全力で謝ってみる。

「……ほんとですかねぇ~。」

「本当です!神に誓います!」

 ほんとに誓います!

 なので追いつめないでーーー!!!

「破ったら?」

「……ご、ご飯抜き……?」

「ぷっ……。」

 ん!!

 わ、わ、わ、笑った?!

 人がちょっと真剣に言ってるのに!

「…高校生にもなってご飯抜きって……。」

「何笑ってんのよ。」

「わ、笑ってませんよ……ククッ……。」

 笑ってないとか言う割にメチャクチャ声を押し殺して笑っている。

 それはもう、どっからどう見ても大爆笑しているようにしか見えない。

「…ご飯抜き……ぷっ……。」

 も~!

 謝った私が悪かった!

 もう知らない!

「──……はぁ……わかりました。今日は許して差し上げます。」

 笑いが収まったのか、涙を拭きながら言う剣斗。

 なんかムカつく言い方……。

「その代わり、今度言ったらご飯抜きですよ?」

 声に出して笑ってはいないものの、かなり堪えてる。

「わかったわよ!準備するから出てって!」

「はいはい、わかってます。…あっ、忘れてました。朝食の準備はできてますけど、こちらでいただきますか?」

 それを言いに来たんかい!

 じゃあ怒る前に言ってよね。

「ん~、こっちで食べる。」

「かしこまりました。」

 …パタン……

 ふぅ~。

 怖かったと。

 ……そういえば何してたんだっけ?

 そうだ、準備準備っと…───。

 ──…剣斗が出ていったので再び準備を始めた私。

 なぜだろう。

 今日はすごくびっくりするようなことが起こる気がする…──。