リュールは出されたものをきれいに食べ終える。

 来た時には見られなかった優しい表情が窺えた。

「由貴か…。すごい客人が訪れたものだ。このわけのわからん争いと虚無のごった返し、どうしたものかと思っていたが、ここに来て正解だった」

「ええ。この世界の描き手としてあとひとり──四季がいるのですが、四季は由貴の書いた物語を絵にする役割を担っています。イメージしたものを具現化する力を持っているので、由貴と同じくらいの影響力を持っているかと」

「へぇ…。ふたりともどんな人物だ?」

「高校生です。従兄弟の関係にあるからか顔立ちも似ていますよ。私が『由貴とお呼びしても?』と聞くと、『ユニスの口から自然に由貴とこぼれるのなら、俺がユニスにそう呼んで欲しいと思ったこと』と仰ってましたね」

「なら、俺が自然に『由貴』と言っているのもそういうわけだな」

「考えてみると面白いですね」

「こんなこと普段は考えないからな。まあ滅多にないことだし、俺が力になれることなら協力する」

「大丈夫なのですか?」

「このすったもんだの状況下で俺に目を光らせている奴なんかいると思うか?いるとしたらよっぽどやることがない奴だ。──空いている部屋はあるか?」

「ええ。案内しましょう」

「お前がか?」

「案内をするのも楽しみのひとつです。あなたと宮廷内を散歩出来るなんて滅多にあることではありませんから」



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