ユニスの眼差しは淡々としている。

「相手との理解に至りたいと思うわけでもなく、最終的に自分たちに共鳴をしてもらいだけの心のなぶり方をする行為に興味が持てないだけです。私ならそういう行為をしたいとは思いませんから。冷たいようですが」

 そういう意味においてユニスは怖いくらいに冷えきっているようにも見えた。

 リュールは可笑しそうに笑う。

「お前、面白いよ。それだけ冷えきっていて、何だって人に情が動くのか、さっぱりわからん」

「嫌気がさすこともありますよ。でも人間は好きです」

 ユニスは紅茶を一口飲み、聞いた。

「リュールは由貴のことをどう思いますか?」

「どうって…」

「私は由貴がこの世界の書き手であると知った時、過去にあった様々な悲しいことがよみがえってきて、どうして、と訴えたい気持ちになりました。でも──由貴に『ごめんね』って言われると、もう何も言えなくなってしまったのです」

「……」

「『もしユニスが望むなら、俺はユニスの望んだ幸せを書いてもいい』とも由貴は言いました。そう言われて──私は幸せの意味に気づいたのです。幸せは誰かに願うものではないと。自分で積み重ね、掴むものでなければ、意味がないのです。理不尽なことを嘆いても仕方がないのだと。何故なら理不尽は自然の理のひとつでもあるからです」

「──。そうだな。俺も理不尽なことを感じたことはあるにはあるが──由貴に『そう書いてくれ』と自分の望みを押しつけるのは違うと思う。そんなものはただの身勝手だ。この世界の物語を書けと言われても俺には書けん」