忍の言葉に四季は複雑な視線を返す。

「『知らない』から、想いめぐらせることがあったり、惹かれるのかな…。無意識に考えてしまうのは興味があるからだよね」

 窓から舞い込んできた風が忍の前髪を柔らかく散らした。

 四季が大事そうに忍の髪を撫でる。忍は四季を見つめふわっと頬をゆるめた。

「変な言い方だけど…。私が四季を選んだのって何となくわかる気がする」

「……。わかるって?」

「だから何となく」

「それじゃわからないよ」

「『本当の好き』は理由なんかないのよ」





 コン、と音がした。

「──四季、いい?」

 由貴の声。どうぞ、と四季は返事をした。

 由貴と涼が部屋に入ってくる。

 涼の着ている服はお人形の着ているような服に近く、愛らしい。

 こうして由貴のとなりに並んでいると本当にこちらの世界の姫君のようである。

「──邪魔した?」

 由貴は仲のよいふたりの様子を見て、尋ねる。

 四季と忍は、見ると、だいたいいつもふれるかふれあわないかくらいの距離を保っていて、それでいて幸せそうだ。

 つき合い始めてから3ヵ月は経つだろうか?

 でも、ふたりの間に流れている空気は穏やかで、もっと長くつき合っているかのような雰囲気がある。

 それが由貴には少しうらやましい。

 由貴と涼はつき合い始めてから1年半になるが、どちらも恋愛には不器用な傾向があるため、未だに勝手がわからないというのか、時々ぎこちなくなったりもする。

 「ううん。大丈夫」と四季が答えて、ソファにかけた。忍もそのとなりに座る。

「涼ちゃん、どうだった?」

 体調は良くなった涼だが、その後「何かが呼んでる気がする」と言うので、ノールに診てもらっていたのである。

 由貴は涼の付き添いで一緒にいたのだが──。