目を閉じて、思い描いて。

 本当に必要とされる想像力は、確かな力となる。





 四季の描いてくれた服に袖を通して、忍は嬉しそうにしている。

 丈の長い白い衣にあたたかそうな肩掛け。

「ありがとう、四季。私も何か力になれることがあったらいいのに」

 笑顔の中に無力さを感じているような淋しげな色も含んでいる。

 四季はそれに気づいて──そうだね、と微笑んだ。

「僕と同じ力を、忍が使えますように」

 そう言ってキスをした。

「使えるようになってると思うよ」

 さらりと言う四季に、忍は戸惑う。

「え?今ので?」

「だって忍が使えるようにイメージしたから。服とかは具体的に絵に描いた方がきちんとした服が出来るみたいなんだけど、こういう絵に描けないことはイメージした方が具現化しやすいみたい」

「え…えーと…。どうしよう。四季、何か今欲しいのない?」

「欲しいの…。のど飴?」

「どうしたの?のど痛いの?」

「さっき空気が悪いところいたから。忍も感じなかった?涼ちゃんも由貴もつらそうだったし」

「そうね…。じゃあのど飴にしよう」

 忍は紙に描き始める。四季が覗き込んだ。

「あれ…長方形?もしかしてパッケージ描いてる?」

「え?うん」

「ふふ。簡単にまるく描いたらのど飴になるのに」

「そうか…。でも箱があると保存状態はいいわ」

 のど飴の箱にきちんと「のど飴」と書いた。

「いいかな」

 忍が筆を置き、描けた絵を手にすると──のど飴に変化した。

「わ。本当。すごい…。ちょっと感動した」

 忍が感激する。

「ね。よく考えると怖くなるんだけど…。うっかり変なこと想像出来ないなって」

「変なことって?」

「…ごめん。忍の顔見たら今、その方に想像力が飛んだ」

「私のことなら想像力使わなくても…。目の前にいるのに」