我を忘れた佐緒里さんはそのまま馬乗りになってそいつをひたすら殴り続ける。
止めたいのに、私は痛みですぐに動けない。


それに一早く気付いた麻美さんが佐緒里さんの肩を引っ張った。

「佐緒里ぃ!」


その声でやっと、我に返った佐緒里さんはふらふらと立ち上がった。
さっき不意打ちにやられた所為で頭から血が出ている。


「…わり、やりすぎた」


ぼそっと呟いてから、佐緒里さんは私のところまで来ると

「大丈夫か?」

そう言った。


「……はい」


痛みを耐えながら、私はどうにか立ち上がる。


「…そうか、じゃあ、そっち座ってろ」

「……はあ?」

「いや、あんた左肩やられてんだろ」

「……舐めないでもらえます?」

「は」

「私、利き腕右なんですよ」

「………」


佐緒里さんは目をまん丸にすると、ぶっと吹き出した。



「ははは!!さいっこー!!じゃーいこーぜ!」

そうして私に手を差し出した。



その手を私は右手で受け取って立ち上がった。


佐緒里さんと背中を合わせて、私は向かってくる光に殴りかかった。