震える哲の背中に腕を伸ばして、擦ってあげた。
何度も何度も擦った。
落ち着くまで。




哲はあたしの肩に顔を埋めて静かに泣いていた。





落ち着いた後も、哲はしばらくあたしの肩に顎を乗せていた。






「…麻美…」


「…ん?」


「結婚しよー」


「は?」


「はは、まじで」


「無理」


「そっかー…。
俺、麻美との子供とか勝手に考えちゃってたんだけど」


「付き合ってもないのに?」


「うん。キモいっしょ、俺」


「うん」


「うわ、ひでえ。
そこ否定しろよ」


「キモいわ」


「ひでえ。また泣くよ?」


「うざい」


「うわ…麻美、なんか増した?」


「何が」


「…キレ…?」


「はああ?」


「ぶは」


「ふは」






顔を見合せて笑った。



この笑顔。
たくさん焼き付けておこう。










あたしがいつ死んでもいいように。