「……花蓮引退まで生きてやるから」


「…………」




何も言わない哲。


そうだよ、それでいいんだよ。




これから死ぬ奴のことよりも、他の奴のこと考えたらいい。




…そう、思うのに胸は痛む。





黙ったまま、あたしはバイクを置いた場所に歩こうとした。



だけど。
哲の手があたしの手首を掴んでそれを阻止した。




「……マジなの」


「…大マジ」




苦しそうに顔を歪めるなよ…。
そんな顔…見たくなかったから離れたんだよ。



会いたくなかったんだよ。



なのに。




どうしてこの海にいんだよ……。




そう思うあたしの顔を哲がきっと睨む。
さっきまでの泣きそうな顔はすっかりなくなっていた。



「…麻美。
バカにすんなよ?」


「……」