「……………え?」
やっと、それだけ絞り出したのか哲がぼそっと言った。
顔は固まったまま。
ぴくりとも動かない。
やっぱり言わなきゃよかったのだろうか。
そう、思いながらあたしは真っ直ぐに哲を見据える。
「脳に悪性腫瘍があるんだって」
「…た、助かるんだろ?」
哲の声は震えている。
そりゃそうだ。
あたしだって実感ない。
だけど、頭の痛みは取れない。
それが紛れもない事実。
「手術出来ないんだって」
「どうして!」
哲が怒鳴る声も。
もう、聞きたくない。
「そんなん知らねえよ!」
あたしがそう怒鳴ると哲はハッとして口を噤んだ。
そして視線を下に落として。
眉を下げて情けない顔をする。
そんな顔するなよ…。