一瞬。 時が止まった。 聞こえたその声は。 だって、そこにいるはずない声だったから。 「……どうして」 あたしは震える声で呟くしか出来なくって。 こちらに走り寄って。 力強く抱き締める哲の腕を振りほどく力なんかなかった。 「……麻美」 ぎゅうときつく抱き締められて、腕に力が入る。 しばらくあたしは呆けたまま。 今の現状を飲み込めずにいた。 どう、いうことだよ…?