「頑張って。困ったことがあったらすぐに言うんだよ」
そう言ってお父さんはは新幹線から離れた。
東京行のチケットを握りしめながらあたしはお母さんと自分たちの席を探した。
もう後戻りは出来ない。
2日後には入学式がある。お母さんは入学式に出席するまで一緒に一人暮らしの準備を手伝ってくれる。
新幹線が出発し、見送りに来ていたお父さんと兄貴を弟は見えなくなった。
田んぼと山しかない景色を見ながらあたしは眠りについた。
目を覚ますと、お母さんが自分の着ていた上着を膝にかけてくれていた。
一人になったら、こういう親の温かみすら味わえなくなる。
少し鼻の奥がツンとしたが、自分で決めたことだからと心に言い聞かせる。