「るっせえな、アイ」
こいつは、まじめなのか違うのか、俺には分からない。
俺みたいに明らかな不良とも平気でわたりあうくせに、心底バカなくせに、生徒からも、センコーからも、絶大な人気を誇っていやがる女。
「一回走ってみたら?」
…スッキリするから。
「ふざけ」
嘘ぬかすな、余計に暑くなるだけだろ。
アイの前をのんびり通り過ぎながら、俺はひらひらと手を振った。
あきれた顔をするわけでもなく、笑うわけでもなく、、、
授業をさぼるために教室を出る俺の手から下敷きを、
背伸びをしてぎりぎりのくせに前髪からピンを、
手際よく抜き取ってから、ようやくこいつも手を振った。