♠翼鬼♠

「いらっしゃいませ、雅(ミヤビ)と申します」


あたしは今、雅という名で遊女をやってる。


もちろん、前髪は下ろしてる。


しゃーない、と山崎さんがしぶしぶといった感じでやってくれた。


「お主、新入りか?」


「はい。よろしゅうお願いいたします」


「もっと近くにこい」


「…失礼いたします」


お前の近くになんざ、行きたくないわ!


さっさと用件言え!


そしてあたしを解放しろ!


「…お酌、いたしましょうか?」


「うむ」


そーっと、お酒をつぐ。


この人は無口なのか、ほとんど何もしてこない。


そっちのほうが嬉しいことは、言うまでもないだろう。


「…お主、雅と言ったか?」


「はい」


「そうか…。名は呪だと、よく言ったものだ。…お主は美しいな」


「ご冗談を。私なんぞ…美しくありまへん」


「そうか?」


いや、聞くなや…。


「…お客はんは、何故ここに?見たところ、女遊びやあらへんようですが」


「…気まぐれだ。女に興味はない」


なら来んなや、こんなとこ!