「キャラメル味、もう売り切れっすよ」

「――……、え?」

「先輩のダチ、キャラメル味って言ってましたよね。これ、最後っす」


古傷を持つ彼が見せてきたのは、購買部で買える女子人気ナンバー1のパンの耳で作られたかりんとうだった。


透明の袋にはオレンジ色の楕円系シールに、白文字で『きゃらめる』とひらがなで書かれている。


「それが最後?」

「そーっすね。俺がラストだって言われたんで」


あなた『きゃらめる』って顔じゃないでしょうよ。


さすがに口に出しては言えないけどさ、どんな顔して『かりんとう』なんて言ったの?


売店のおばちゃんだって『その見た目で甘党!?』って驚いたに違いないよね。


「欲しいならあげてもいーっすよ」


がさっ、と。彼の持つかりんとうが袋の中で跳ねた。


突然の提案に驚きはあっても、さっさとこの場から立ち去りたい気持ちが勝る。


「えぇっと……売り切れてたって話すから大丈夫」

「じゃあお詫びならいーっすか? 不本意だけど盗み聞きしたようなもんですし」


なんでちょっと上から目線なのよ。


盗み聞きされた私の気持ちを少しは察してほしい……って、だからお詫びにって言ってるのか。